ご挨拶

 この度、第13回日本緩和医療薬学会年会を2019年5月31日(金)~6月2日(日)の3日間、幕張メッセにて開催致します。
 2006年に施行された「がん対策基本法」の交付当時、我が国における緩和医療への重要性が高まりつつあったものの、緩和ケアの中核ともなるべき医療用麻薬や鎮痛補助薬等を扱う薬剤師の情報共有のための学術的基盤は十分ではありませんでした。そのような時代背景の中、2007年に本学会は、日本の緩和医療の更なる充実の為、保険薬局薬剤師、病院薬剤師、さらには大学での教育研究、企業での開発・学術研究の連携を含めた専門性を究める学術研究促進を加速させるために設立され、現在に至っております。当初は、600名程度の会員で設立致しましたが、現在では約4,000名の学会員を抱え、我が国の緩和医療を牽引する組織となっており、世界の緩和医療の向上にも貢献しております。
 第1回日本緩和医療薬学会年会は、「緩和ケアにおける薬(病院)・薬(薬局)・学(大学)連携の実践」をテーマとして鈴木勉年会長のもと、星薬科大学にて執り行われました。第1回年会では、約190演題の発表でありましたが、昨年度の第12回年会では300を超える演題が発表され、緩和医療薬学会の発展とともに年会の規模も年々大きくなり、参加者の皆様にとってより良い情報交換ならびに親睦の場となってまいりました。
 第13回日本緩和医療薬学会年会では、次世代の緩和医療に目を向け、「鎮痛の正義を科学して臨床に活かす−次世代型包括的緩和医療のための緩和医療学、疼痛制御学、腫瘍免疫学、神経精神薬理学の境界統合的理解-」をメインテーマとして、疾患領域横断型のアプローチによって緩和医療と他の医療分野との専門家間のコミュニケーションが活発に行われることを念頭に置き開催されます。緩和医療を終身医療の主軸と位置付け、様々な最新医療とcutting edge technologyを駆使した最先端研究を融合した新しい情報や治療ベクトルを参加される皆様に提供するために、鋭意プログラムを作成しております。
 本邦におきましては、モルヒネ、オキシコドンおよびフェンタニルに加え、メサドン、タペンタドールならびにヒドロモルフォンが導入され、強オピオイドの選択肢が非常に広がりましたが、これらを使いこなすためのエビデンスの充実がまだまだ足りないため、本年会では、これらの使用の実態と有用なアルゴリズムについて、深く議論していきたいと考えております。また、オピオイドの副作用防止/軽減のための新しいストラテジーについても議論してまいります。
 基礎研究においては、脳-末梢連関や免疫制御の理解を促すための画期的な分野横断的学術領域の進展があり、生物学的、医学的な新発見が相次いでいます。技術の進歩と解析法の発達もあって、個体評価の精度は確実に向上しており、がん治療とがん支持療法の新しいベクトルを作り出せる多くの科学的証明が行われています。本年会では、こうした新しい風を皆様で感じて頂ければ幸いです。
 これまで緩和医療薬学会では、緩和薬物療法認定薬剤師制度を設け、専門性の高い薬剤師の育成に寄与して来ました。今後は、緩和薬物療法専門薬剤師制度を設け、さらに専門性の高い薬剤師の育成を目指していくことになると思います。認定薬剤師の上位資格としての専門薬剤師を目指すにあたり、通常の業務だけでなく、常にup to dateな情報に対してアンテナを高く張り巡らせ、様々な状況においても適切な医療/介入を行なえる医療人となっていかれることを本学会は応援致します。本年会では、こうした未来のリーダーとなられる方々をはじめ、緩和医療に携わる皆様に十分に満足していただけるコンテンツが提供できるように努めてまいります。
 最後になりますが、このような充実した新企画を展開することが出来ますのも、会員をはじめ多くの皆様のご理解とご協力の賜物と深く感謝しております。次世代型緩和医療を意識した様々な発表に、多くの皆様のご参画を、心よりお待ち申し上げております。

第13回日本緩和医療薬学会年会
年会長 成田 年
(星薬科大学 薬理学研究室 主任教授)

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